「業務用PCは何を見て選べばいい?」——スペック表を見ても何が重要かわからない、という声はよく聞きます。PC整備・販売の現場から見て「ここだけ見ればほぼ失敗しない」という5つのポイントを整理しました。

まず前提:「業務用PC」は目的で変わる

業務用PCに正解のスペックはなく、「何に使うか」で最適解が変わります。ExcelとZoomしか使わない事務職と、SolidWorksで大規模アセンブリを扱うエンジニアでは、必要なPCのスペックが10倍以上違います。

この記事では「CAD・3DCG・映像制作・設計業務などのクリエイティブ・技術系業務」を主な対象としています。一般的なオフィス業務(Office・ブラウザ・Zoom中心)の場合は、Core i5・16GB RAM・SSD 256GBのミドルレンジPCで十分です。

確認すべき5つのスペック

1. CPU:コア数とクロック速度のバランス

CPUは「コア数が多い=速い」とは限りません。用途によって「シングルスレッド性能(クロック速度)」と「マルチスレッド性能(コア数)」どちらが重要かが変わります。

用途重視すべき推奨CPU
CADのモデリング・操作シングルスレッド速度Core i9 / Xeon W(高クロック)
3Dレンダリング・動画エンコードコア数(マルチスレッド)Xeon W / Threadripper
Office・Web・一般業務どちらでも可Core i5〜i7で十分
機械学習ローカル推論GPU性能が主・CPU補助Xeon W(PCIeレーン数重視)

💡 世代にも要注意


同じ「Core i7」でも、3世代前と現行では性能が30〜50%異なることがあります。コア数だけでなく世代(第何世代か)も必ず確認してください。

2. メモリ(RAM):容量と規格の両方を見る

業務用PCのメモリは「容量」だけでなく「規格(DDR4/DDR5・ECC対応かどうか)」も重要です。

  • 16GB:Office・Web・動画会議中心ならこれで十分
  • 32GB:PhotoshopやIllustrator、軽量CAD、動画編集(FHD)なら最低ライン
  • 64GB以上:SolidWorksの大規模アセンブリ・4K動画編集・After Effectsなら必須
  • 128GB〜:3Dシミュレーション・科学計算・機械学習なら

CADや医療系ソフトウェアを使う場合、ECC対応(エラー訂正機能付き)メモリが必要です。ワークステーションクラスのXeon搭載機でないとECCに対応しないため、購入前に仕様書で確認してください。

⚠️ 「最大32GBまで増設可能」に注意


購入時のメモリ容量が少なくても「後で増やせばいい」と思いがちですが、搭載されているスロット数・空きスロット数・対応規格によって増設できる上限が変わります。購入前に空きスロット数も確認しておきましょう。

3. ストレージ:SSDの「速さの種類」を見分ける

SSDにはいくつかの接続方式があり、速度が大きく異なります。業務用として選ぶなら最低でもNVMe(M.2)SSDを選ぶべきです。

種類読み書き速度(目安)評価
SATA SSD500〜550 MB/s△ 旧世代。コスパはよいが遅い
NVMe SSD(Gen3)3,000〜3,500 MB/s○ 現在の標準。業務に十分
NVMe SSD(Gen4)5,000〜7,000 MB/s◎ ハイエンド。大容量データ転送に有効

容量の目安は以下のとおりです:

  • OS・アプリのみ:256GB〜512GB
  • CADデータ・映像素材も扱う:1TB以上
  • プロジェクトデータを大量に保管:2TB以上、またはNASへ逃がす

4. GPU:「グラフィックスカード」は用途で選ぶ

GPUには大きく分けて3種類あります。用途に合わせて正しい種類を選ぶことが重要です。

種類代表製品向いている用途
内蔵グラフィックスIntel UHD / AMD Radeon(CPU内蔵)Office・Web・一般業務
ゲーミングGPUGeForce RTX 4070 などゲーム・動画再生・一部3DCG
プロフェッショナルGPUNVIDIA RTX A2000〜A6000CAD(ISV認定)・医療画像・シミュレーション

CAD・シミュレーション・3DCGの業務用途では、プロGPU(NVIDIA RTX Aシリーズ)を選ぶのが基本です。主要CADソフト(AutoCAD・SolidWorks・CATIAなど)はプロGPUに対してISV認定ドライバを提供しており、正式な動作保証があります。ゲーミングGPUでも動作はしますが、公式サポート外であることは覚えておいてください。

関連製品

NVIDIA RTX A2000 12GB(中古・動作確認済み)

3840 CUDAコア / 12GB GDDR6 ECC / 70W / ロープロファイル対応 / ISV認定ドライバ対応

¥54,800(税込)

5. 拡張性:将来のアップグレードを見据えた構成か

業務用PCを選ぶ際は「今のスペックで足りるか」だけでなく、「2〜3年後も使えるか」という観点が重要です。以下の点を確認しておきましょう。

  • 空きメモリスロット:増設の余地はあるか
  • 空きPCIeスロット:GPUの追加・交換が可能か
  • 電源容量:ハイエンドGPUを入れるなら650W以上が目安
  • M.2スロット:NVMe SSDの追加が可能か
  • OSサポート期間:Windows 10のサポートは2025年10月終了。Windows 11対応機を選ぶこと

💡 中古ワークステーションが拡張性で優れる理由


HP Z4・Z6のようなワークステーションは、PCIeスロット×4〜6・M.2スロット複数・750W〜1000W電源と、拡張の余地が最初から大きく設計されています。新品のBTO PCよりも拡張性に優れる機種が多いのが特徴です。

スペック早見表:用途別の目安

用途CPURAMGPUSSD
Office・一般業務Core i5〜i716〜32GB内蔵で十分256GB〜
動画編集(FHD)Core i7〜i932〜64GBGeForce / RTX A1TB〜
CAD(AutoCAD・軽量)Core i7 / Xeon W32〜64GB ECCRTX A2000512GB〜
CAD(SolidWorks・大規模)Xeon W-2200〜240064〜128GB ECCRTX A4000〜1TB NVMe〜
3Dレンダリング・VFXXeon W / Threadripper128GB〜 ECCRTX A4000〜A60002TB〜
機械学習(ローカル)Xeon W(PCIeレーン多)64GB〜 ECCRTX A4000〜A60001TB NVMe〜

まとめ

📌 この記事のまとめ

  • 業務用PCのスペックは用途で最適解が大きく変わる。まず「何をするか」を明確にする
  • CPU:用途によってシングルスレッド速度重視かコア数重視かが分かれる
  • メモリ:CAD・シミュレーション系はECC対応が必須。容量だけでなく規格と空きスロット数も確認
  • ストレージ:業務用途には最低でもNVMe(Gen3)SSDを選ぶ
  • GPU:CAD・医療・シミュレーションにはISV認定のプロGPUが必要
  • 拡張性:2〜3年後のアップグレードを見越した空きスロット・電源容量も確認する

journal001 編集部

業務用PCを実際に仕入れ・整備・販売してきた PC Atelier(CIT)のスタッフが執筆しています。カタログスペックではなく、現場の視点でお伝えします。